最近は、UXなどという言葉は当たり前になっているが、最初に聞いたのは2003〜2004年だった記憶がある。コンセントの長谷川さんが主催のIA勉強会で、IA Summitで取り上げられていたという話で初めて聞いたことを覚えている。
そこからしばらくUXという言葉を忘れていたが、スマートフォンが出てきてUI/UXという言葉で復活した。そこからは当たり前のように使われるようになったキーワードである。
UXをデザインするにあたって、HCDの文脈における手法、ペルソナやユーザインタビューなどの手法がクローズアップされている。一方で、ユーザインタビューはユーザに責任を委ねているだけなのではないか?特定のユーザーの意見に引っ張られてしまうだけなのでは?という言説もあり、そこにあるギャップを言語化したいと思っていた。
先日、ベトナムで会ってきたフリクラシーの国本社長がこういう記事を書いていて、改めて考える機会になった。
ユーザーヒアリングという悪・思考停止
要するにユーザヒアリングがカバー可能な範囲というものがあるということを言
っているのだと読んだ。
ユーザインタビューで聞けることは、
・ユーザにとって明示的な不満やニーズを調査したい
もしくは、
・市場的には明示化されてないが、自分たちには明示的な仮説を調査したい
のどちらかだと思う。前者は、1-10,10-100,100-のフェーズにおいて退会や機会損失を防ぎ、すでに存在するプロダクトのペインポイントを発見するもので、後者は、イノベーティブなプロダクトや、まだ見ぬ世界を作り出す時に適用されるものである。
何を目的とし、何を目指すか?というテーマによって聞くべき内容や聞き方は変わってくるであろう。
思い起こせば、2000年前半のUXDの議論はスタートアップなどではなく、すでに大企業になったebayやYahoo!などのネット系企業や、すでに売上がたくさんありプラスアルファの問題解決をWebで実現したいナショナルクライアントの案件をこなす受託系企業の人たちが関心を持っていました。IAにおける情報整理の文脈など、ペインポイントがある程度明確なものを解決する方法論だったのかもしれない。
デザイン思考におけるユーザインタビューはパーツの一つでしかない
イノベーション、そこまで大げさな言い方ではなくても明示化されていないニーズを発見したいプロセスにおいては、「とりあえずユーザインタビューをしましょう」は危険だということがわかります。不適切なアプローチで不明瞭な既成事実を生む可能性があるからです。
KMDに通っていた時に、デザイン思考の授業で感銘を受けたのは、デザイン思考の入り口は「ビジョンと哲学」という属人的な概念からスタートしていて、それを形にするためのユーザーの観察やプロトタイプ作成、そして、ユーザインタビューは仮説を検証するためのものということでした。
「ユーザーは欲しいものはわからない」ということを前提として、仮説に基づいたプロトタイプを見せることで、ユーザーはあたかもそれを知っていたかのように、「WOW!それ欲しかったのよ!」と言わせれば勝ちであって、あくまでも主役は提示するプロトタイプの検証そのものです。インタビューそのものはPMFの一作業に過ぎません。
もしプロトタイプをどう作ったらいいのかわからないからユーザインタビューするんだ!と思ってしまったのであれば、この文章で言いたいことをしっかり考えてほしいと思います。
文脈違いますが、この記事みたいな話にならないように。
日本企業は「お勉強」海外視察を撲滅せよ。日本人は相手の時間奪う意識が希薄
そうか。現状調査、勉強という意味であればありかな。
インタビューをする目的をしっかり設計せよ。混ぜるな危険!
結論としては、何を検証したいのか?という仮説無くしてはユーザインタビューは成り立たないということでしょう。そしてその仮説は、狙うバーの高さが高ければ高いほど簡単には見つからないものです。それは鶏が先か卵が先かと思い悩むぐらいは苦しんでもよいものです。
もしそうでははなく、すでに完成したアプリのユーザビリティを調査したいのであれば、UIのひっかかりはないのか?狙い通りのメッセージが伝わっているか?ということに限定したユーザインタビューをしますなどと設計するのがよいでしょう。
間違っても、そこから新しい機能やインストール数が10倍になったり、継続率が劇的に向上するような施策はそれほど見つからないであろう前提でやるのがよいと思います。そのボタンを掛け違うと最悪死ぬかもしれません。間違っても、その時にユーザーのせいにしないでください。
いろいろ思い悩み考え続け、あがいた結果、どんな方法論をとっても何か思いつくことはあります。それはあくまでも、ありとあらゆることを考えている前提の上で、己の内面からヒントが生まれてきたということでしょう。映画ソーシャルネットワークで、ザッカーバーグが友達と話をしていて、交際ステータスを表示することを思いつくという好きなシーンがあります。
そういう現象をセレンディピティと言うそうですが、24/365でプロダクトのことを考えている人だけが生み出せる特権だと僕は思っています。
ソーシャルネットワークの映画自体は創作だそうですが、あのシーンは本当によくわかってるなと思って映画館でニヤッとしてしまいました。アイディアを思いついてコードを書くために端末に走っていく時の気持ち、あの時がプロダクトを作る人にとっての最上の喜びです。
話がそれました。新しいイノベーションが目的であっても、すでにワークしているサービスのチャーンやグロースハックだったとしても、最初の入り口は、企画として解決すべき問題を設定し、仮説を作り、必要なら検証しましょう、その方法は何でやるのか?というプロセス設計であって、ニーズそのものを探すためのユーザインタビューは悪出ということになるのだと思います。それならばアクセスログやデータベースなどのファクトを目を凝らして観察し続け、仮説を立てる方が全体分析として生産的です。
繰り返しになりますが「ユーザーは欲しいものがわからない」けど「良いプロダクトを提示することでメリットは理解されなくてはいけない」という難題を解決することが大きな目的なのだと思いますので、それについてはしっかりと考えていきましょう。
100回ぐらいユーザインタビューをやり続けたらさすがに何か見えてきてほしいですが、そのぐらいやる覚悟があるなら、というレベルの話なんだと思います。