エンジニアの職能の一つに「重箱の隅のような問題に気がつくスキル」というのがあります。このスキルのおかげで、見積もり精度はあがり、将来に起きうるリスクを防ぐことができるというメリットがある反面、不確実性のあることへの恐怖、100%の確信がないことから自分の発言に自信が持てない、決断できないなどのデメリットをもたらすことがあります。
これを総称して「不安係数∞」という言葉を、はるか昔から使っていましたが、それに言及した自分の昔のブログの記事でいいものが見つからなくなってしまったので、もう一度書いておきたいと思います。
我々は日常、たくさんのリスク要素に気が付きます。Webサービスならセキュリティホール、ネットワーク設定の不備、技術的負債に基づくスケーラビリティ問題などなどが代表例ですし、受託ならお客様の対応が信じられない、納期がころころ変わる恐怖、仕様が難しすぎて実現できないのでは?などなど。
昔の2チャンネルでは、何かネガティブなことがあると「もうダメぽ」などの言葉が跋扈していましたが、そのような言葉を使うのは自分自身を洗脳していくことになります。家入さんがツイートで、脳内の言葉には主語がないという話を書いていて納得してしまいましたが、他人に毒舌を投げる人は、同時に自分にも言葉のナイフを投げている人が多いです。(その自覚がない人もいるが)
そのようなタイプの人が抱きがちな現象として、何かのイシューが見つかった時に、現実がどうであるかとは別に、心の中の時間軸や進行が進んだ先の事を考えてしまい、ものすごく悲観的に思ってしまう現象を「不安係数∞に思いがちな人」という表現を使ってみたいと思います。
それは起こりうる真実なのかもしれないですが、不安係数が大きければ大きいほど、現実的に起こりうるまでにはいくつかの条件が重なることがあって、それらを全部すっ飛ばして、最大級の不安にさいなまれることも起きてしまいます。これでは正しいリスクマネジメントはできません。本人にとっても精神的に辛いし、それで過剰に反応することで、現実的には起こりえないコストを支払うこともあります。
これに対応する方法はたた一つ、そのイシューが起きる現実的な見積もりを算出できるだけの技術力や知識、ビジョンをもつことに尽きます。
ちょうど、そんな話を書かれた本が2019年1月1日からkindle配信されていました。
ファクトフルネスという本です。
ファクトフルネスとは――データや事実にもとづき、世界を読み解く習慣。賢い人ほどとらわれる10の思い込みから解放されれば、癒され、世界を正しく見るスキルが身につく。
世界を正しく見る、誰もが身につけておくべき習慣でありスキル、「ファクトフルネス」を解説しよう。世界で100万部の大ベストセラー! 40カ国で発行予定の話題作、待望の日本上陸
ビル・ゲイツ、バラク・オバマ元アメリカ大統領も大絶賛!
「名作中の名作。世界を正しく見るために欠かせない一冊だ」―ビル・ゲイツ
「思い込みではなく、事実をもとに行動すれば、人類はもっと前に進める。そんな希望を抱かせてくれる本」―バラク・オバマ元アメリカ大統領特にビル・ゲイツは、2018年にアメリカの大学を卒業した学生のうち、希望者全員にこの本をプレゼントしたほど。
◆賢い人ほど、世界についてとんでもない勘違いをしている
本書では世界の基本的な事実にまつわる13問のクイズを紹介している。たとえば、こんな質問だ。
質問 世界の1歳児で、なんらかの予防接種を受けている子供はどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%質問 いくらかでも電気が使える人は、世界にどのくらいいる?
・A 20%
・B 50%
・C 80%答えは本書にある。どの質問も、大半の人は正解率が3分の1以下で、ランダムに答えるチンパンジーよりも正解できない。しかも、専門家、学歴が高い人、社会的な地位がある人ほど正解率が低い。
その理由は、10の本能が引き起こす思い込みにとらわれてしまっているからだ。◆教育、貧困、環境、エネルギー、医療、人口問題などをテーマに、世界の正しい見方をわかりやすく紹介
本書では世界の本当の姿を知るために、教育、貧困、環境、エネルギー、人口など幅広い分野を取り上げている。いずれも最新の統計データを紹介しながら、世界の正しい見方を紹介している。
これらのテーマは一見、難しくて遠い話に思えるかもしれない。でも、大丈夫。著者のハンス・ロスリング氏の説明は面白くてわかりやすいと評判だ。その証拠に、彼のTEDトークの動画は、累計3500万回も再生されている。
また、本書では数式はひとつも出てこない。「GDP」より難しい経済用語は出てこないし、「平均」より難しい統計用語も出てこない。誰にでも、直感的に内容を理解できるように書かれている。
この本を読むと、もう勉強しろと言うしかないですね。そして悲観的な話だけでなく、「何も起きていない」「起きていないことを選択している」という事実にも目を向けてみましょう。
不安係数∞とは徹底的な自信のなさから来ていることが多いです。自己承認力の多寡は、学生時代の優秀さとは連動しませんが、社会人の優秀さには欠かせないパラメータです。そのパラメータの存在に気がつき目を向けることは重要です。性格は変えられないですが、論理的に物事を考えることで社会人力は高めることができます。
是非、あなたも読んでみてはいかがでしょうか?
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