Web系ディレクターの憂鬱

#本記事はフィクションです。(というか、これは、ただのエクスキューズで、誰に向けて書いた記事でもないという意味ですw)
#今回もまた人に読ませることを意識して書いてるわけじゃないので、冗長です。

Webの受託系の会社についての話を雑談でしていて、ディレクターって最近少なくなっちゃのかなという話をしていた。

当社でも、最近ディレクター職という役割が生まれていて、それは良いんだけど、案の定「誰がやるか?と言われればディレクター ?」みたいな話が徐々に増えつつあるので、整理するためにも少し昔を振り返ってみたいと思って、この記事を書いている。

混沌とするディレクター職の仕事範囲

僕が所属していた会社で、受託の仕事をしていた2000年代前半は、僕が入った時で10人ぐらい、大きくなって30人ぐらいがWebの仕事をするチームだったかな。開発、デザイン、営業を全部自分達でやる受託の会社だった。案件規模は、制作だけなら初期300万円くらい、開発が入って2000万円以下までの規模の案件が、会社としてwelcomeな組織体だったと思う。

その時のディレクター職は、「個別案件において、開発とデザインとマークアップと営業以外の全ての仕事」をやる役割だった。

一例として、記憶の限りを書き出してみると、新規案件系のタスクだと、

・案件範囲のプロジェクトマネジメント(進行管理)
・受注後の顧客とのやりとり全て
・顧客へのWebサイト構成等の実装の前準備の提案
・デザイナーに仕事をさせるための画面フローの設計、IA
・マークアップに仕事をさせるための画面情報の整理
・完成したマークアップやシステム完成後の成果物確認 (リンクチェックとか文言チェックとか)
・納品連絡

だった。

要するに、

・発注主との円滑なやりとり
・プロジェクトの進行管理
・Webの設計
・納品物の成果責任

を全てこなすことを求められていた。

最初の頃は、Webもまだ黎明期で、かつ、器用な人がやってたのでよかったんですが、徐々に、人が入れ替わるたびに、上を全部こなすことは難しいということに気がついたというのがこの記事に書いてあるすべてです。

業界においても、一定規模以上の案件には、一貫性のあるWebサイトを設計する専門家としてのIA職が必要だ!という話になったりした。僕も、情報設計の専門家を作ろうとして、IAグループを作ってみたりした。

その後、Web2.0を経由して、スマホ時代になると、UI/UXなどと言う言葉が流行って、ようやく、日本の会社でもUxDの専門家が生まれたり、ビジネスをグロースさせるためのグロースハッカーが切り出されたりして、専門分化できた仕事に関しては、専門職として切り離すことができて、少しみんな楽になるけど、人によっては面白い仕事が徐々に取られていくかもしれないので、徐々に、そっちの専門職に移行していって、最近Webディレクター少なくね?などと話をしているのがディレクター職の近況ということなのでしょうかね。

昔、WebSigで2006年に、ネットイヤーの坂本さんに、情報設計=IAという仕事について話をしてもらったことがあるが、当時の彼はディレクターという役職だった。つまりIAとは、ディレクターの職能であるというのが当時の彼の見解。今は、UXの専門家として動かれているようで、何より。

(こちらは坂本さんの本。オススメです!)
IA/UXプラクティス モバイル情報アーキテクチャとUXデザイン

ちなみに受託は、基本的に「そのサイトを通じてやりたいこと」の責任は持たないため、乱暴に言えば「うまくサイトを作れればゴール」というビジネスモデルなのに対して(と言ったら、怒られるかもしれないけど、ビジネスモデル上はそうなっている)、Webサービス系の企業であれば、「ビジネスとしてやりたいことを実現するのがゴール」になるため、上記の仕事に加えて、

・顧客とのコミュニケーション(いわゆるサービスの運用)
・SEO/SEM
・パートナーとの調整
・グロースハック
・プロモーション (メルマガ書いたり、コンテンツ作ったり、広告運用したり)

等々もここの範囲の仕事に自然に与えられる可能性があったりする。

(もちろん受託主体の会社もお客様のビジネスのゴールのお手伝いをするという形で、このような仕事を受けている会社さんも増えている。つまりビジネス関係性を継続するや否やという立ち位置で、お客様のビジネス実現のリスクを共有することでお金をいただくということだと思う。)

いずれにせよ、その会社で専門組織として切り出せないものは、「ディレクターが全部やる」として投げられやすいのが、ディレクター職の特徴で、うまく立ち回ることが求められるので、器用な人が活躍しやすいが、どこに自分の武器を見出し、それが専門性なら専門性という武器をどう作っていくか?を毎日、意識して仕事をしていかないと、なかなか器用貧乏にもなりやすいという職種でもあったりする。

Webディレクター職の育成が難しい問題

Webディレクターが減ってしまったという言説に含まれる問題として、以下の2点が想定される。

1.それがマネジメント職に近い役割でありながら、マネジメントとしては教育されない問題
2.マルチタスクという意味で難易度が高い仕事なので、慎重な会社だと、失敗が怖くて重責をもたせられずに成長しないか、安易に丸投げする会社だと人を潰す。それ故に、いつまでたってもベテランがディレクター職をやっていて人が増えないケースか、すぐ離職して育たない悩みを抱え続けるか、だったりする話はよく聞く。

あと、以前見ていたケースで、ディレクター工数を原価として計上しないようにしてたがために販管費として以下に圧縮するか?というのもあったな。つまり、一人のディレクターに10個とか案件を持たせて、疲れてやめちゃうケースなどがある。10個案件持つと、月あたり2人日しか案件に関わることができない。それで楽しく仕事ができるのか?という問題になると思う。

マネジメントとWebディレクション問題

昔いた会社で制作部隊のトラブルを見ていて、とある役員が「全然マネジメントしてないじゃないか!」という言葉を発していて、当時は正直、言ってる意味がわからなかった。

当時起きていたことは、最初のディレクションが不味くて良い成果物ができてなかったものを、自分たちのやりたいことベースで、顧客調整をすることなく、良い成果物を求めるがゆえに、途中まで組み上げた建築物を壊そうとしてしようとし、お客さんに納期の延長を求めてビジネス的にも窮地に陥れるというようなことを、「いいものを作る」という、誰も正論すぎて反対できない自分たちの行動原理のみで物事を進めてしまうということが起きていた。

当然、後工程である開発側は、いろいろ圧縮されるので不満タラタラである。

最初からちゃんとマネジメントしていれば、そうはならないべきだったし、途中でヤバくなった時の回避策についても、多分、お客さんと話をしながら、もっとうまくいく方法があったということだろう。

つまり進行は管理していたが、それはただ流れを見ていただけで、それが適切な納期適切なクオリティでアウトプットするためのマネジメントをしていなかったということになる。

どの組織においても、仕事に関わってくれるみんなは、大体、真面目なのだが、残念ながら、「よいアウトプットを出したい」と、よかれと思っていることが、今、自分たちがやらねばならない目標とずれてしまうということはよくある。

それを、ありのままにと放置してしまうと、気がついたら、取り返しの付かないズレを生んでいることがある。そこで後からロールバックなどをすると、そもそもお互い辛いし、不信感を持つ結果にもなる。そういうのを現場の目線で、即座に気がついて、リアルタイムに適切に軌道修正するというのが、マネジメントの仕事であるが、これは制作管理という範囲においては、ディレクターの仕事そのものでもある。

さいごに

ただ何となく書いてみたいと思っただけで、目的もオチもないのだが、それぞれの仕事は、非常に重要な仕事なんだが、どうにもいろいろ詰め込まれると、一つ一つの濃度が薄くなっていく面も否めない。

例えば、進行管理を、ただの進行管理としてみなすと、誰でもできそうと言われがちな仕事であるが、人をポジティブにさせる能力というのは、特殊能力だと思うし、そこで起きるメンバ間の軋轢などのよしなしごとを適切に処理できる人間は重宝されるのは間違いないし、プロジェクトマネジメントというのは、状況状況において、取捨選択をする仕事だ。それがちゃんとビジネスの目的と同期する目線を持っている人もまた重宝される。特に、Web系で人を使う面で言うと、割と高学歴で若くてプライドの高いエンジニアと、割と高学歴で若くてプライドの高いデザイナーとどうやって協働しながら、良い成果物を作っていくか?という仕事で、製造業のように、プライドの高い、おっさんの職人とうまくやっていくスキルとか、建築現場のように、もうなんかいろんな人生の人がいてね、みたいな世界ともまたやり方は違うだろう。

そういう中で、例えば進行管理であれば、マネジメントに繋がる部分をしっかり身に着けていくとか、IAやUXDであれば、Webをどう作るかという話だし、BIだったらビジネスに寄与するグロースハックをどう毎日きざんでいけるか?を考える部分だし、Webの運営もグロースハック側面もあるが、それに加えて、旅館のおかみのおもてなし、みたいなことができる人だったら、それこそ、そのまま起業してやってけるんじゃないの?みたいな経験もできると思うし、気持ち一つでいい方向に持っていくことができるのだが、結論としては、忙しいのは悪ということで、それをこなせるだけの、キャパを自分の中に持つように努力して、その先にある世界観にどう目標を持つか?こそが大事ですよねー、などと、というよくわからない結論を書いて終わります。

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