インターネットにおける情報非対称性とサイレントマジョリティ

これまでライフログが失敗した理由、ツイートのネガポジ判断がポンコツな理由、A/Bテストが絶対的に欲しいと思う部分に共通するインターネットの特徴が一つある。

・インターネットには、何かの意思を持って発信された情報しかアウトプットされない。

ということ、つまり、

・一つ発言から顕在化した問題点があったら、そのN倍は暗黙的に同じことを考えてる問題がある可能性を考慮すべき。

というあたり。ただし、それについての定量的な証明はネットからは不可能である。ないものはないからだ。

これと類するものに掲示板の書き込みのコスト問題というのがある。

ネットでは、誰かが何かをアウトプットしないことには、その意思を確認することができない。
しかし、書き込むためには強いアウトプットの意思が求められる。そのパワーが弱いと、書き込むことすら面倒くさくてやらない。反論される可能性まで考えると何も言わないほうがマシだからだ。

それ故にネガティブな書き込みは、いとも簡単にネットに出てくるが、どうでもいい、もしくはポジティブな意見というのは、そうそう出てこない。ライフログ的アプローチは、ここに人の善意か何かによるポジティブなツイートが、ネガティブと同程度、存在することを前提にしていると思われるが、実感としてはむしろその逆の現象が起きているような気がしてならない。

僕はインターネットに存在する意見で、ネガポジ判断は不可能だと思う。
ポジティブ意見がほとんど見えないから。一部の書き込みから「ネガティブではない」か「何も起きていない」ことを判断するのが関の山であろう。

これをどうにかするなら、仮説に基いて、該当行動を測定可能なアクセス解析等の行動ログから調査するか、A/Bテストで実際に確認してみないとわからない。あとはアンケートなどからリサーチしてみる手もある。要は信じられる人に直接聞けというやつだな。

例えば、顧客クレームが来た場合、バグなどの本当にヤバイものに関してはその数でニーズを確認できるかもしれないが、「もっとこうした方がいい」程度のものだと、そのアウトプット数は圧倒的に減る。だから、その数だけで判断すると、「もっとこうした方がいい」理由は判断できずに埋もれる。もし、そこに潜在的問題点を抱えていたら放置される。意思決定者が関心を持って、そのことを取り上げなければ、その妥当性が証明できない以上、非意思決定者では提案ぐらいしかすることができない。

将来、IoTデバイスが実現するものもここ。例えば医療系デバイスと、それにあわせた統計解析が流行ることで、今までなら「病気にならないと発覚しなかった問題」を、行動履歴から「予防的に判断することができる」かもしれない。これはサイレントマジョリティの行動をクラウドを通じて自動的に測定、判断しようという試みだ。

そう、これらの要素が理解できてなければ、「病気にならないと判断できない」のだ。

例えば心筋梗塞の疑いの判断ができるとしても、血圧や心拍等の身体の行動履歴から統計的に推測するだけであって、心臓の病気を直接測定するものではない。それがビッグデータのアプローチというものであろう。ただそれとて、心筋梗塞という明確なゴールがわかってるから逆算して仮説を立てられているだけで、その病気が判明していなければ、雲をつかむような話にしかならない。

それ故に、何かを掴みたければ、人間の頭で考えるしかない。

なお、このような非対称性の裏付けを調べたければ、自分が関わっているサービスを止めてみると良い。

価値のあるサービスであれば止めたことは怒られるから、簡単にツイートなどから調べられるが、復旧したことは、ごく少数しかツイートされない。その情報に価値があるとわかっている人や、元々、強く怒っていた人だけがツイートする。例えばAWSが復旧した場合などだ。これは公共性があるので、善意からツイートする。そもそも動いていることが当たり前なのだから、止まっていたことを知らなければ特に何かを思う人はいない。

これを逆手に取ったものが炎上マーケティングだ。ポジティブを伝染させるのは難しいがネガティブを伝染させるのは比較的容易なので、認知向上が絶対的に必要なら、実際のところ炎上マーケティングも一つの手段としてアリだ。ブランドを毀損する?そもそも認知度がないんだったら毀損するものはそんなに大きくないし、商品性にもよる。ゲスの極みの方は問題なかったがタレントの方は大問題になった。それと同じ。それに、それよりも得られることが多いことを知っている人がいるから、炎上マーケというキーワードがある。

以上のことから、ユーザ行動に基づく情報の非対称性の存在を認識しておかないと、インターネットからの情報は判断を見誤る。

広告がPV指標依存から抜けられないのも、いくつかこの要素で説明ができる。別の指標で計測しようとすると、あまりにも実装に依存して媒体間の比較がしにくかったりする。PVを指標に用いるのは問題もあるが、シンプルで強力でもある。今のところその状況から抜けられてないのが、現時点におけるインターネットの限界だということだと思う。

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