ITは必要悪か?を読んで

第一部は、ビシバシ、インスピレーションを刺激された。第二部は少し専門的すぎてわからなかった。

ITは必要悪か?その1 – 急がば回れ、選ぶなら近道

内容について何かを言えるとか言いたいとかないのだけど、読んでいてツマミグイ的に書かせてもらうと、

「ITは、IT + ITで繋がってナンボ」

だなって思った。

手前味噌であるが、クレカ決済システムに繋がるためのWebサービスとしてのPAY.JPとかなら、そもそもITシステムと連携するITシステムとして作らなきゃ参加ができないし、提供しているものはAPIなので、その先もITシステムだ。

IT x ITという構造で自動化可能なビジネスが育っていくのであればITシステムを作るのにはものすごく意味がある。

入り口でお金を払ってる存在が人で、買ったモノを届ける人が人間だったとしても。

自動化vs人力

価格.comの掲載リストの常連店は、価格.comの価格をコントロールするbotシステムを持っていると聞く。つまり価格.comで一定ランキング以内に位置すれば自動的に誰かが商品を買ってくれるわけなので、その位置を一定の利益率の中で自動的にキープするというシステムだ。

それが価格.com必勝法であれば、脚で稼ぐ営業マンは必要ない。「一定利益率を確保できるなら価格.comの一定ランキングに入る」というissueを解決するロボットを作って、人間はそこで生まれた発注情報に従って淡々と商品を送れば良い。もしかしたら、物流の部分もオートメーション化されていくかもしれない。

人間が商品を欲しい時に価格.comを見て、そのままネットで買うボリュームが一定数いるなら、それ以降はすべてオートメーション化することは不可能ではないだろう。それでお金が流れる世界。

そういうのがITの理想だとする。

もしもう少しややこしいビジネスにおいて、どうしても間に人力の価格判断を入れなくてはいけないとする。それこそ電気屋の店頭交渉こそがビジネスの本丸である、とする。

その胸先三寸こそが営業のセンスであり利益の源泉であるならば、ITでいくら効率化しても、人間という非常に遅い効率の悪いところにビジネスの肝があるなら、そりゃ簡単にITは生きない。

おそらく世の中、そういう仕事のほうが圧倒的に多いのだと思う。

まぁ、でも、それは悪い話ではない。マッサージ屋さんは、マッサージをしてお金をもらう。その効率化はなかなか難しい。そういうビジネスは、人間がやることに価値の源泉がある。それ故に簡単にITや機械には置き換えられない。ただ自動マッサージ器のようにカジュアルニーズは機械化されていると思う。そういうのは仕方ない。つまりハイエンドの部分だけ、人力の価値が残るという部分だ。

人力の重要性

さて、冒頭の記事の「ITに投資して売り上げは上がるのか?」という言葉にすごく引っかかった。おそらく、そういうお客さんがいるのだろう。

ところが、先ほどの価格.comボットが売り上げを上げている源泉とは何か?を考えると、それはITシステムではない。

あれは限界利益率の設定と、それを回すオペレーションという人力の話だ。おそらく限界利益で利益を出すためのメーカーとの交渉や、限られた資源の中で商品の目利きも含めて売り上げを上げるのはITシステムではない。人間だ。

ITを駆使している人たちは、別にITだけで金を稼いているなんて思っていない。その裏側で意思決定をしたり、手を動かしている人間こそが売り上げを支えていることを知っている。むしろ、人力をどう生かして、レバレッジ的にお金を動かすのか?こそが今どきのスタートアップの考えてることだ。

それ故に「ITに投資して売上は上がるのか?」という言葉に違和感を持った。ITに投資して、空いた時間で、お前が売上を上げるんじゃい、という印象しか持たないのである。

効率性の話

そもそも、何十年か前、コピー機すらままならなかった頃は、契約書一つ手書きで書いて、それを人力で届けて、それで仕事をした気になっていたハズである。ところが今は、紙も使わず、お互い信頼関係があるならメールだけで受発注ができる時代。AWSに至っては価格表がWebに載ってるだけで、お客さんが勝手にサーバをレンタル的に購入してくれる時代。

手書きで契約書を書いて判子を押していた時代とくらべて、なんと楽な時代なことか。ただ楽なことが売上に繋がらないのは、単純にライバルも同じ道具を持っているからだ。そこでは差別化はできない。しかし、メリットとして、あなたの時間は絶対的に作れるハズだ。そこを重視すれば、ITで売上が上がらないって言葉が、どれだけ傲慢な言葉なのかなとは思った。

人工知能が恐れられている未来においては、IT x ITでビジネスが回ってしまう世界が想像できる。その時に人間は何をしているのだろう。一番非効率な部分を支えるのか、意思決定をするごく少数になるのか、というのは結構大きな差が生まれるかもなと思っている。

自動車という言葉が面白い。自動の車というのは、比較すると、人力車の自動化版という考え方もできる。人力で人力車を使って遠くに行くのはものすごく非効率だ。非効率なものを、そこそこ効率化した自動車はすばらしい。それ故に儲かる。どんなに自動車が進化しても、今のところワープなどはできないのだから、自動車の限界は、人間に依存する。それでも人力車より速いのだから、価値が大きい。

ITも同じで、ITの本質的価値は、人力で何かを行うよりも、短い時間で実現できること、に他ならない。端的に言うと、ITの価値とはそれだけだと思う。昔、i-modeで、渋谷の駅で行き先を探すときに、当時のi-modeで経路探索するよりも、次の山手線が来てしまうほうが早かった。それならば、駅員さんに質問するというのが合理的解決法だった。

ところがi-modeが3Gになって、スピードが早くなったことで、十分、その場で検索しても経路が探索できるようになった。ITの価値は、そういうところにしかないと思う。UI/UXも最終的には如何にわかりやすさを重視して目的までの時間を短くするか?という方法論ではないかと思う。

つまりなんのこと?

2つの投資パターンが考えられる。

一つは、IT x ITで自動的にお金を回せるような世界である。

これは完璧なITの活かし方である。UBERやAmazonが目指しているのは明らかにそこだろう。というかAWS自体はそれが完成されていると思う。あとはAWSを使う人達が、多段でビジネスを積み上げていくとAmazonの株価は凄いことになる。IBMもようやくそこを追いかけ始めた。

そして、もう一つは、最終的には人間が避けられない非効率を、うまくITや機械を活用して、そこそこ解決するビジョンが見えている世界である。こういう世界は、如何に最後の人間系のところまで効率化してあげて、人間系の頑張りで地道に価値を生み出すことができることが重要だ。機械はコモディティ化してしまうのでエンドツーエンドの人間系の部分にしか付加価値は宿らない。

この二つはIT投資をする価値がある。

それに対して、あまり価値が無いように見えてしまうのは、明らかに人力のボトルネックが存在して、それが変えられない会社、だと思う。つまり人力が少々、頑張ってもあまり利益に繋がらない状態にあり、ITシステムが持つせっかくの効率性の足を引っ張っている世界である。

ビジネスモデルが数値評価的に研ぎ澄まされてない場合は、そこに特化できないので、ITも生かせないところが多いと思う。そして、そういう会社が圧倒的に多いような気もする。別に何もそれを否定してるわけではない。ただ、「そうは言ってもいろいろあるんだよ」というのが、そういう系統の人たちの口癖であろう。でも、本当にそうなのか?もしくは、悪しき慣習の中で流されちゃってるのか?は考えてみても良いような気がする。そういうのを正論で破壊する人たちのことを黒船と呼んだりするわけだし。

ただ、まぁそれだと他社に置いていかれないようにするために必要悪のIT投資という話が出てくるのは、まぁそりゃそうだろうなぁと思った。

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