頭の中にあるUIデザイナーという言葉について整理する

こんど名古屋のWCANに登壇するが、そこで話の内容に繋がるイメージも兼ねて、かつ、以前登壇したUI crunchを思い出しながら、UIデザイナーについてウダウダ書いてみる。えと、ネットには公開しますしシェアもしますが、僕のマインドマップみたいな文章なので読まなくて良いと思います。ポジティブに足りないところをアドバイスしてあげようといういい人だけ読んでもらえるとうれしいです。

■UIデザイナーとは?

文字通りUIをデザインする人。UXの一パートではあるが、原則としてUXの責任者ではない。ただし特定の業界の特定のアプリのように、UX部分にお約束が決まっていて、作るもののの幅が限定されていると、UI = UXとなり、これがUI/UXと呼ばれるポイントではないかと思うが、厳密には、この2つの範囲は違う。

UXはどちらかというと企画寄りであるし、ビジネスと連動する場合はマーケティング寄りであったりもする。アプリやサービスのフィロソフィーに連動しているものがUXであるべきで、スタートアップであればあるほどこの傾向が強くなる。大企業の場合は、自社が提供する広範囲のビジネステーマの一部から、アプリに切り出す部分をUXと呼ぶこともあると思われる。

いずれにせよ実現するUXをアプリやWebサービスに落としこむ際に、ユーザインターフェース部分を設計するのがUIデザイナーである。

ところが、各社がUIデザイナーに求める範囲は、まちまちである。その理由を開発者に置き換えてみるとわかりやすいが、設計だけしてコードを書かない開発者というのは、まずそもそも実装経験者じゃないとできないし、分業をしない限りは成立しないので、UIデザインのみをやるというのは、ひと通りのプロセスをこなせる人材のみが得られる立場ではないのかとは思う。大企業の場合は、部署としてその部分を担う組織を作ることも不可能ではないかもしれないが、その場合は、スキルの幅やキャリアパスを考えると企画寄りの人材ではないのかと思うのだが、どうだろう。現実的には、企画としてのワイヤフレームを作るフェーズがそれであり、更に協力会社がもう一度、詳細のUI設計を行い実装品質を担保する2フェーズがあるのではないかと思う。

また、いわゆるWebデザインにも言えることで、ビジュアルデザインだけをしてUI設計をしないというのは、決して効率の良い話ではない。また、UIデザインをどのようにするか?という部分に、Webの実装技術が不可分であると思えば、UIデザイナは、JavaScriptやObjective-Cのいくばくかは書けたほうが話が早い。

つまり、一部を切り離すことに対する何がしかの合理性が伴うことで、UIデザインの専門家は成立するのであって、そうでなければ、Webデザインとセット化、実装とセット化、すべてがセットになるというのが、少なくとも小さな組織では取りうる手となる。

■分業ポイントについて

会社の組織形態によって分業ポイントは変わる。

分業のポイントは、簡単に言えば、その組織の既存のチームにどういう人材が沢山いるかで決まることが多い。

フロントエンドのコーディングやJavaScriptの実装に長けた人がリーダーシップを取っている場合、その人が責任が取れる範囲から、ビジュアルデザインは切り離される。その場合、ビジュアルデザインのデザイナーと、実装担当は分業する可能性が高い。UIデザインは、その間のプロセスで存在しているので、どっちの役割の人が得意か?などで決まっていたりする。

また、単純に大量のWebページを作るような仕事の場合は、作業量に対する分業が責任分界点となることもある。例えば、受託の場合はワークフロー上、複数の顧客に対応することが多いので、マルチに案件をこなすことを想定して、組織上最もスケーラブルな工程を組めるところで分業するという考え方になることもある。

つまり、ビジュアルデザインフェーズが顧客の同意をえる重要なパートになるが、そのような場合は原則としてUIデザインは、ビジュアルデザイナーが兼ねている場合が多いのではないだろうか。例えば開発会社が上流の会社がある場合、先方の開発者と協働しながらデザインを作っていく場合、UIデザインは、ビジュアルデザインの中に内包してしまった方が都合が良い。

顧客に同意を得たデザインを、マークアップのプロセスで実装に落とすという分業をしている場合は、そのようになるハズだ。

それに対して、単発アプリのUIデザインこそが命という場合は、UI設計から入って行くことはある。いわゆるプロトタイプツールや、Visioやパワポ、イラストレータ等を活用して、情報の構造設計を先にするようなケースである。この場合、最近はUIデザイナという専門職がアサインされている可能性もあるが、以前は、ディレクターの仕事であったりもした。つまり、顧客との仕様のやりとり、仕事の構築などの工程の中に、UIデザインが内容されているケースである。

また、BASEのようなスタートアップにおいては、そもそも人数が少ない組織であることから、UIデザイナーは、Webデザインとフロントエンド実装を兼ねているケースが多いのではないか。UIデザインは、ビジュアルデザインと不可分であり、よりよいUIデザインは実装と不可分であるからだ。また日々の継続改善のタスクの中で、これらの人材がコードを書けないというのでは、非効率極まりないからである。

ポイントとしては、Photoshopやイラストレーターで作られたデザインが、HTMLやJavaScriptに落とされると言う工程が不可逆になるからであって、毎回毎回PSDからHTMLやCSSに変換できるとは限らないというところにある。UIは、HTML、やJavaScript、更に言えばPHPなどのサーバサイドテンプレートに落ちてしまったコードになっているのであり、それを、改善するにあたってPSDしか使えない人材であると、その間をつないであげる人が必要となってスピード感に欠ける。足りない部分をサーバサイドエンジニアが埋めるのか、フロントエンドの人材がやるのかは会社の文化によって解釈が分かれるからだ。

もう少し言ってしまえばPSDしかいじらない人材が、1日8時間のタスクが埋まるのか?という話になってくる。故に、ガチのビジュアルデザイン、UIデザインは外注してしまうというのも手だ。その人は、そこだけのパートを担う人材として複数の企業の案件をこなすことで切り分けができるからである。

いずれにせよ判断基準は、「実装をやらずして良いUIが作れるのか?」という部分にあって、それができるなら別にPSDで分業してしまっても良いし、自社で人材を育成するのであれば、それぐらい全部やってよ、とお願いしたいという部分に、会社それぞれの判断が入ることになる。

■どういう人材が良いの?
UIデザインの専門家が、情報系のアカデミックなパスを除いて、広義のデザイン分野から来るということを想定すると、

・ビジュアルデザインスキル
・実装技術

は最低限、ものを作れるレベルでは必要である。ものを作れるレベルという表現はものすごく主観的だが、その通り会社ごとに主観的であるべきなので、求めるスキルレベルもまた組織ごとにケースバイケースである。組織毎成長する前提であれば、スキルは走りながら武器を拾う形で解決していって、気合と根性だけあれば良いというケースもあって良いと思う。

そして、フリーのディレクターである某氏がディレクターに必要なスキルを「最後はケツを拭く覚悟ができること」と言っていて、僕はそれを信じるので、ピンで仕事ができるレベルのディレクターは、これらのスキルの上位職として存在すべきと考えます。

また、これらの技術をベースとして、肝心の商品を如何に作るのか?という部分をUIデザインであるとみなすならば、

・Webやアプリの業界動向や競合の関心

は強く持っている必要はあるだろう。それこそ、他の誰よりもWebサイトを見ています、海外動向はいつも追っかけています、みたいなものは、信頼されるためにあると望ましい。

当然UIデザインに関する動向、IAやUX、サービスデザインなどにもできるだけ関心をはらって欲しい。

■まとめ

まとまってるのかわからないけどw、UIデザインに従事する人、雇う側の組織によっていくつかのパートがあると思われる。

1.ビジュアルデザインを系譜とするUIデザイナー
2.ディレクターなどのビジネスの流れを作る役割からのUIデザイナー
3.認知心理学やHCDなどの専門家の系譜におけるUIデザイナー

などが考えられる。

ちなみにBASEにおいては、あくまで偶然であるが、元サーバサイドの経験があるデザイナーがUIデザインをやっているという人がいて、つまり人材ニーズが、デザイン + 実装に寄っているのだと思われる。作れてナンボという部分が大きいからだ。

今後、組織が大きくなってくれば3.などの専門の役割の人とグロースハック部隊がセットになって動くなどという可能性はあるかもしれないが、スタートアップの小さな段階では、まだまだそれだけを担う人材を迎えるというのは組織としては重いのが正直な所である。
(ただある日突然、実現するかもしれない。決して軽視してるわけじゃない。いずれにせよ、おいしいビジネスモデルとセットで最適化する何かが必要と考える。)

2のディレクターパスは受託などにおいてはあるパスだ。昨今の事業会社の場合はディレクターという職種が存在しないというケースがちらほら見られる。そういう役割はマーケティングやグロースハッカーに内包されていたりする。つまりより事業の実現にコミットする形で、実装実現スキルとリーダーシップを取れる人材がいるか否かで、変わってくると思われる。

(あ、念のため書いておくと、組織はビジョンベースで役割の箱を決めてからアサインしていくという方法もあると思いますが、周り見渡してできる人に役職をつけてアサインするというのもあると思っていて、僕は後者の選択をイメージすることが多いです。まずファーストペンギンたる組織の作り手がいて、そこに部下がついていれば、その後を担ってくれる流れになることが想定されるし、そうなっていることが望ましいのではと考える方です。)

■結論
この文章を考えてから、少し頭の中に置いてみたんだけど、結局のところ汎用的にはデザイン、制作寄りからのキャリアパスは不可欠で、サーバサイドなりディレクションなりのスキルが副次的にあるとやりやすい、ということなのではないだろうか。

一つだけアカデミックのパスと、企画からのパスで実装経験が少ない人のパスというのがあるが、この人達はHCDや認知心理学を武器にして、それが活かせるステージの存在が不可欠であると考える。

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