適材適所について

我々は、「世の中をわかりやすく単純化して伝えないといけない圧力」に常に晒されています。
よくある「これからはBの時代、Aはオワコン」という言葉。

例えば、自分の身の回りはiPhone率が高いです。しかし世界中はAndroidがたくさん使われています。この現象はわかっていたことですが、それ以上にガラケーもまだまだ残存台数は健闘しています。あれだけ量販店の店頭がスマホシフトしていたにも関わらず、です。実際の所、今もガラケーのサービスに売上を支えられている日本企業もたくさんあるわけで、物事を単純化すると、世の中が見えなくなります。

そもそもメディアのニュースバリューには、「そうなってほしい期待感」というポジショントーク的な要素があるのは当然のことです。そこにチャレンジという要素がある以上、真に受けると損をします。誰も、その結果に対する責任は取らないし、取れません。

こういう言葉に敏感すぎる人は、潜在的に世間に対する恐怖心が増えていくハズです。世の中残酷だな、と。だから、こういう言葉にはいくらか鈍感の方が、世の中を生きていくのは楽です。少なくともバズワードが世の中を正しくモデリングできていない以上は、そのまま釣られるのは得策ではありません。

とはいえ、現状に満足してしまってはいけないキーワードが「適材適所」です。

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これまで隆盛を誇っていたサービスや製品が、「適材適所を担う製品」に部分的にその立場を奪われる現象が起きます。

・HTMLベースの日記から、テンプレートエンジンで管理できるblogへ
・blogから、もっと簡単なTwitterへ
・書きやすいけどコミュニケーション性が低いTwitterからFacebookへ
・実はTwitterも友達コミュニケーションに支えられていたので、スマホでもっと気軽なLINEへ

日本の場合は、ざっくり言うとこんなトレンドでしょうか。
スマホシフトの波で携帯ユーザがこの世界に流れこんだのとスマホ自体の拡大により、ユーザ母数はステップを追う毎に増えているようです。

データベース製品で言うと、

・Oracle,SQL server,DB2から、お手軽かつ高性能なMySQLへ
・MySQLから、リアルタイム、高速ストレージエンジンの部分はKVSへ

などという現象も起きているようです。

ここで2つのことを考えなくてはいけません。

ひとつは、冒頭に書いたように、

・そうは言っても、既存製品やサービスが活躍する場所は、そう簡単にゼロにはならないよね

ということであり、もうひとつは、

・でも、いつまでも古いサービスや製品に固執するのもどうかな。だって適材を担う製品が出てきたのだし。

ということなのだと思います。データベースに当てはめると、

・いやいやRDBもまだまだ行ける
・なんでもかんでもRDBじゃないよね、適材適所でKVSも使ったほうがよくね?

ということだと思います。

この答えはありません。C向けだろうがB向けだろうが、マーケティングワードやプラットフォームという枠組みに依存して、「新しいもの」「古いもの」と言われる可能性があります。コードベースでものすごく古いのか、新しいのか、というのもあるでしょうし、トレンドとしての要件を快適に実現できるか、できないか、というのもあるように思えます。

破壊的イノベーションを画策する側にとっては、とにかく成功した巨人を古いものにする「イノベーションのジレンマ」を満たすための新しいルールを作っていく必要があります。

「◯◯でいいじゃん」と言われることは、挑戦者にとっての大敵なのです。そういえば昔、地域コミュニティサービスが出てきた時には「mixiでいいじゃん」問題がありましたね。成功した巨人と同じルールで戦ってはいけません。

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HTMLから、CMSに移って、Twitterへ移った流れについては、大規模データの並列処理や、リアルタイム性こそが命だったと思います。Twitterのおかげで、世界中で起きたニュースは瞬時に個人のツイートレベルで探すことができるようになりました。これは、今のFacebookではできていない魅力ですし、「ホームページ」でも難しいです。

難しいと言っても、ホームページ+Google検索は、割とはやく情報検索をやってくれます。しかし、検索エンジンのリアルタイム検索は、今のところ適材適所ではないようです。Twitterのリアルタイム性に求められる時間幅が数分以内に起きたことを瞬時に調べられるレベル。Googleのような分散システムでは、一つのポータル、単一検索エンジンに即時に反映されるTwitterにはかなわないでしょう。物理的にクロールしないとデータがもってこれない検索エンジンではこのオーダーの勝負を勝つのは今のところ難しいです。(CMSが通知すりゃいいんだけど、今のところそのシステムは複雑で重いですよね)

何より大切なのは、「ユーザーの期待感」でしょう。Google検索エンジンで、「今日起きたローカルな話題」をさがせるイメージはありません。それが実際は可能だったとしても、個人的にはTwitterで探します。Twitterに対する期待感=ブランドは「リアルタイムニュース」だということでしょう。特に権威のない個人レベルのニュースネットワークだと言えます。(もしくは権威ある人の非公式な書き込み)

しかし,ストック情報でもあるホームページレベルの情報発信をするのにはTwitterは向いていません。だから、他の技術とうまく組み合わせて作る必要があります。

あとはビジネスモデル。インターネットは基本的に広告と相性が良いです。GoogleやTwitterが広告モデルである以上、ここは無視できません。
そうは言ってもSEOなどのビジネス要件に依存しているのが世の中の広告システムであり、まだまだリアルタイム広告は実現していません。

広告の入稿システムは、ITが簡単に実現できるはずのリアルタイム性が「責任」という人間の足かせにひっぱられて、地味にビジネスの足かせになっています。今はRTBなどのシステムが自動的に制御するようです。しかし、パーソナライズされた行動履歴による検索クエリに基づく、ローカル&リアルタイム広告はまだビジネス的には実現していません。(チャレンジしている会社は昔から沢山あると思います)、Twitterの広告枠でさえ、今すぐ簡単には買えないのです。

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どんどんネットでは新しい概念が出てきます。そのたびに、「Aはオワコン、Bがすばらしすぎる10の理由」などの記事につい心が踊らされてしまいます。
しかし、当たるインターネットベースのプロダクトの要件は、

「シンプルなメッセージで、時代性を作れるもの」

のような気がします。そこで切り捨てられたものが、既存サービスの利益要件になるか、足かせとしてのレガシー要件になるかは、ケースバイケースです。

マーケティングレベルか、製品レベルかはわかりませんが、常に2つ以上の力学でサービスは動いているのだと思うところで、それぞれ何が良いのか、世の中は何を求められるのかを見た上で、そうでないとこの潜在母数も見極めた上で、いろんなことの判断をしていかないといけないですね、という月並みな結論を書いて、この、ただの長文つぶやきを終わりにしておきます。

当記事をsubmit後にFacebook見たら、丁度こんな記事が。

ツイッターはブログの代わりではない | maclalala2

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