価値創造契約の件の感想

ござ先輩が書かれてた、永和システムマネジメントさんの価値創造契約の件が非常に興味深いですね。

永和さんの「価値創造契約」が大苦戦を強いられている件

最初にこの話を見た時に、うまくいくのかなーと思ってたらやっぱり現状はダメなのか。何がクリティカルなのかなーと考えてみて、自分が思ったことだけメモ。

永和さんの資料から考える

・「いつでも解約できます」は問題ないように思える。
そもそもどのビジネスだって都合で切ることができる契約にするほうが望ましいし、大体、契約書はそうなってる。

・「サービス利用料」の月額の支払い設定は、何が適切かをどうやって選べるんだろう。
適切なコンサルティングができていなければ、ここで固まりそう。

・チケット制が難しいってのは、結構聞きますね。

チケットの消費に対するお得感がないんだと思います。変な言い方かもしれませんが、チケットを消費する要因として、発注主側の「社員の失敗」が支出に直結するようなものってすごく嫌がられると思う。「社員の失敗」は、教育のことだからできるだけ社内の固定費の範囲で抑えたいと思うものじゃないかな。

・「最終的な仕様は永和さんが決める」・・・これは絶対にダメそう。プロダクトマネジメントが何の利益に立脚するか?という部分が共有できないですよね。ソニックガーデンさんのように話し合いで決めるってのと、あくまでも作業工数のコントロールにとどめておくべきだと思いました。

・権利関係、「著作権が永和さんに所属」・・・これもアウト。リスク管理上認められない気がする。

この仕組を立ち上げるには?

この仕組を、どうやったら立ち上げられることができるのかと考えたら、

「成功実績を積み上げるしかない」

これにつきるかなと思いました。この方法論がビジネスに有益であるということを嘘でもいいから、そのために身内親類縁者を総動員すべきです。(嘘をついてはいけませんが、極論すると、如何に成功の空気を作るかだと思います)

その要素を、もう少しブレークダウンすると、

「信頼できる既存顧客に受け入れられるか否か」ではないでしょうか。ソフトウエアの権利が信頼の問題であれば、信頼を作っていくしか手がないように思えます。

でも、なんとなくですが、営業がすごく嫌がりそうですよね。ないとは思いますが、もし既存顧客に対する売上のカニバリズムを気にしてるなら、残念ながら成功は難しいような気がします。専門でコミットメントしてる会社さんの方が強いと思います。

感覚ですが、どうもキレイなビジネスモデルすぎる感がどうしても否めません。give and takeを成立させようとしすぎてると思うんですよね。僕が言うのもおこがましいですが、商売は、give and give and giveで、最後にどうやってtakeを得るかというのが理想のような気がします。

すごくキレイなビジネスモデルは稀で、一見リスキーな仕組みなんだけど、結果的に市場の信用を得ることでスケールする状態に持って行こうというのが、後発のビジネスモデルのあり方だと思います。それがサイバーエージェントさんが成功した広告のクリック保証だったり、今、BASEやYahoo! Shoppingが進めているサービス無料化だったりするんじゃないでしょうかね。今は、弁当の宅配系という明らかに時間的に不利が大きく、労働集約的なビジネスがどうスケールするかを興味深く見ています。

受託の場合は、基本的に技術売りなのでgive and takeがすごくわかりやすいのですが、その分、アジャイルで解決したい問題が発生しがちだったりするのだと思います。

それを解決したいというのはわかるのですが、「お客さまの側」もいろいろ稼働しているという部分に対する配慮が少し欠けているように思えました。それが「権利関係が持てない」という部分や「最終的な仕様」の部分にあらわれているような気がしました。

何度か技術的負債も資産なんだよって話を書いたことがありますが、それと類する話で、ソフトウエア資産が永和さんに所属するのが難しいかもなって思いましたね。資産は会社の規模を示すパラメータ。重要なITシステムなのに、自社の資産に積み上がらないってのは、数字にも現れる問題のように思えます。

AWSが良かったのは、ハードウエアは設備投資で買うわけですが、数年後にゴミになることがわかってるからです(だから償却があるわけですが)。ソフトウエアは価値をつければゴミにはなりません。ここは決定的にコンフリクトしていると思います。

話はそれますが…

受託の会社がレベニューシェアを、相応に有利な契約をまくこと無しでやるのは相当難しいという話を聞いたことがあります。特に相手が大企業の場合。

それは、ビジネスに貢献しているのは一体何が要因なのか?が不明瞭だからだそうです。

すこし例を使って説明すると、例えば楽天市場の価値というのは、ネットショップの管理システムではないと思います。それはシステム利用料の一部としてお金を払ってる部分だと思いますが、今の楽天市場の成功に結びついた部分で言うと「集客」です。

店舗さんは、売上手数料に抵抗を抱きつつも、集客は簡単には買えないので、お金を支払って解決するわけです。システム利用料よりも、売上連動課金の方が収益が圧倒的に大きいです。

受託で立ち上げたばかりのシステムだと、ビジネスのバリューはゼロに近いです。先行投資というとキレイですが、楽天市場に例えるとシステム利用料の部分しか、まだ魅力がないわけです。それだってBASEやYahoo! shoppingだったらゼロ円で使えてしまったりします。

顧客は、何らかしらのビジネス実績を持った会社さんが多いわけですので、システムとのビジネス価値はゼロの状態から、命を吹き込むのは発注主のマーケティングや既存事業とのシナジーです。

つまり売上に直接繋がる部分は、ソフトウエアではなく、自社のブランド力やマーケティングに依存します。その状態では、まだシステムを開発することよりも、顧客企業の存在そのものの方がビジネスの成功要因には重要です。

このような考えの下では、レベニューシェアみたいなものは成立しえません。give and takeが成立しないからです。楽天市場で言うなら、売上連動課金ではなく、システム利用料だけを固定で払って終わりにしたいと思うハズです。

永和さんの話に繋げると、もし、こういうメンタリティが発注主側にあったとしたら、ソフトウエアを作ることに対して、少なくとも、権利が外に行ってしまうかもしれないということは受け入れられないと思いますね。

何故なら、自社のブランド力で立ち上げた作ったサービスの中身だけ、他社に入れ替えることが永和さんにはできるということにもなるからです。

そこで失われる価値は、おそらく永和さんにお支払いをする額よりも圧倒的に価値が大きいですよね。それだったらお金をちゃんと支払って、自社の権利になるものを作ろうよ、という話になるのは自然だと思うんですよね。

あと、成功する方法を考えてみると

よくamebaフォンとかfacebookフォンとか、ネットサービスに特化した携帯電話が出たら良いよねって思うことあるじゃないですか。でもあれが成立しないのは、携帯電話会社からすると、特定のネットサービスは、どれだけ大きくてもワンオブゼムなんですね。だから、どうしても特定サービスに塩を送るという視点にならざるを得ないようです。それを上から目線と言うとのは簡単ですが、カバーしてる範囲が違う以上、そういうものなのかなと思います。

成功した例で言うと、サービス企業がリスクをとって自社サービス特化の電話を作ったAndroidというケースか、完全子会社であるYahoo!フォンぐらいですよね。

現状とりうる方法論で大きく成功する方法を考えると、月並みな発想ですが、1つはプラットフォームを成立させて圧倒的優位性でパートナーと組むか、一緒に出資してJVを作るという方法論しかないような気がしますけどね。

つまり、とことんリスクとコミットメントを共有するというありかたです。

ということで、アジャイル云々の手前に、意思決定のしにくさの部分で苦戦しそうだなって思ったりしました。アジャイルという理想的な生き方で突っ走った部分は理解できますが、それに伴う少しネガティブな視点からのリスクマネジメントについては、もう少し考慮しがいがあるように思えます。

うだうだ書いてしまいました…

もう中の人はわかってるような話をべらべら書いてしまいました。(昨夜書いて、眠くて制御できませんでした。これ書いた瞬間にベッドに突入してしまいまいした。。)

多分、僕が言いたいことを朝まとめてみると、

・ソフトウエアのビジネス価値は最初はゼロ。運用の先に価値が付加されるので、その貢献は誰か、そして権利を誰が留保するか?に対する配慮が欠けているように思える。

かなぁ。アジャイルがソフトウエアを作るための方法論であることはわかりますが、お客さんが欲しいのはビジネスの成果ですからね。永和さんは資料の中で、長く使い続けるシステムを提供されたいって書いているので目指していることは同じだと思いますが、それなら簡単に切れる契約になってるのは経営者目線では逆のような気がしますね。2段階のリスクモデルを立てた方が良い気がします。いわゆる「お試し契約」と「ズブズブの本契約」でしょうかね。

でも、すごく良いお話でした!勉強になりました。ありがとうございます。頑張ってください!

本件、せっかく素晴らしい情報を提供していただいたので、是非、他の方のご意見もお聞きしてみたいです!多分、僕の意見はECとかネットビジネスに偏りすぎて、社内システムの視点がないように思えます。

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