ちょいちょいフルスタックエンジニアが話題になってますが、フルスタックと言う言葉がキャッチーすぎて「なんでもできちゃう不思議な手」をお持ちの方なんていねーよ!というツッコミも起きていますが、その割にはフォトショの切り抜きなども含むビジュアルデザインなどのクリエイティブ作業が入ってないので所詮都合のいい定義だよなーと思うわけです。
最近よく目にする「フルスタックエンジニア」とは何だろうか? - Publickey
「What We’re Looking For」の項目では、5年以上のエンジニア経験とチームリーダーの経験などを求めた上で、技術的には次のような要件を並べています。
Very experienced with web application deployment and software design principles
Expert-level Python and Django
Full-stack skills must include JavaScript, CSS, and HTML5
Familiarity with JavaScript frameworks such as Backbone or Ember
改めて、この記事を見てみると「5年以上のエンジニア経験とチームリーダーの経験」の方がよっぽど重いじゃねーか!と思いきや、クリエイティブを作れなければ「全部一人で」というのはいささか大げさな表現なわけで、結局、それすらも分業の限定的な1シーンでしかないということですね。
僕が知りうる限りで一番幅広いフルスタックな人はツイキャスを作ってるモイの社長の赤松さんかな。それは相当レアでしょうなー。フォトショでアイコン作ったりして、HTML,CSSも書いていて、PHPでストリーミングサーバ書けて、iPhone,androidアプリも自分で書いて、高いレイヤーの技術も低いレイヤーの技術も偏見を持たず分け隔てなく接することができ(ビット単位の技術力を持つ人は個々の技術に偏見を持たない)、実際に実用化して数百万人のユーザーに使ってもらってる人なんて、少なくとも僕は日本人で見たことない。(今は、それを分業していくよう目下、人材採用中です -> こんな感じ )
なんでもUXにする言葉の乱用への批判と大体似たような文脈で、フルスタックエンジニアという言葉も乱用が問題になっていてフルスタックエンジニアもバズワードとして消費されているようです。特に求人。
そういえばこういう議論は2004〜6年ぐらいにも同じような話がありました。その時にあったのは、
「フォトショ、イラレでデザインできて、HTML書けて、Flashも作れてディレクションもできる2年以上の経験者きぼんぬ。時給1000円」
という、今で言うフルスタックデザイナーの求人ですね。
懐かしい。
フルスタックに対する感情的反論の原点は、フルスタックを求める文脈が、制作/開発プロセスを「できるだけ減らしたいコスト」としか見てないのが透けて見えるんだよね。そこは製品を作るための「必要な試行錯誤」という視点がないから、いいように使われるイメージしか持てないんだよね。自己実現に必要なスキル要素を分解することなく「できる人、あとは、お願いします!」と言ってるようにしか見えない。それなのに相互の信頼関係を作るところから始めると、後々苦労するのが見えちゃうんですよ。
「年収1000万円のエリート会社員」を探す婚活と似たような話だね。年収1000万円のエリート会社員を、会社の成長と一緒に育てていく気概がない。そりゃできるやつを探せってのは当たり前なのだけど、婚活に例えると、年収1000万円の会社員って全体の何%だっけ、その何%って、あなたのところに来てくれるほどの待遇や仕事面の裏付けあったっけ!?という話になるのは自然だと思います。
少なくともスタートアップの求人だったら「フルスタックエンジニアになりたい人募集」というのが適切のような気はしますねぇ。募集の段階では間口を広げるのはキホンですし。
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