UI/UX言うな話と、スタートアップのCTO事情

スマホ時代になって、ネットビジネスの世界が広くなってきたのと、ネットサービス業界と受託など、違うビジネスモデルの人たちがクロスすることが増えたので、「その言葉」で実現したいことに対するスコープのズレが出てきて、「そもそも論」の部分で話がややこしくなることが増えてますね。

今回のキーワードは2つ。「UI/UX」と「CTO」の話。両者とも、たどってみると共に人材採用で使われているキーワードが原因でした。

まず「UI/UXって併記するな」問題。僕の記憶が正しければ、この表記を最初に見たのは、どこぞのアメリカのiPhoneアプリだったかモバイルファーストの成功について書いた資料だったと思うのだけど(リンスタだったっけ?!)、スマホアプリという限定された文脈において、UIはUXを実現する重要なファクターだという意味合いでUI/UXと書かれていたんじゃなかったかなぁ。

スマホアプリのスコープに閉じれば、UI/UXと書くのはわからんでもない。特に一発芸アプリやゲームであれば、そこから得られるUXは楽しければOKなのだし、アプリが醸し出す文脈など関係なく広告をクリックしてくれれば儲かるのだし、そこに適したアプリ広告がビジネスとして闊歩してるわけだから、いわゆるサービスデザイン的UXのような真面目な考え方はオーバースペックだ、とも言えなくもない。まして儲かってるスマホアプリの大多数はゲームだ。

かくして、UXという言葉を聖なる考え方と捉えたい人と、カジュアルに「良いもの」へのメタファとして使いたい人の間で重要度がズレてくるのは仕方がない。主に意識の高い受託の人だけがUXという言葉を考えていた時代にも、「アカデミックか否(現場感)か」という表現で多かれ少なかれ似たような断絶はあったと思います。(と言っても事例はebayとかだったわけで、単純に人同士がつながってなかっただけだろう。)

スマホ時代にUIがUXに与える影響は間違いなく大きいのだから、UIデザイナーの採用に記載されるジョブディスクリプションにUX(の一部)と書くのは間違いではないと思います。ぶっちゃけPCのWebブラウザやケータイではそこまでは言い切れなかったのは事実であって。

UXをどう作るか!?なんてまともに考え出したら、絶対に経営までエスカレーションされていくので、担当1人が全てを支配する必要はないしできません。でも、担当者に当事者意識は持って欲しいのだから、少なからずUXの意識を前提に出すのは大切なこと。その上でどう製品のUX全体をハンドリングできるか!?は、その会社(社長や事業責任者)のポテンシャルじゃないですか。

しかしながら、ちょっと内輪ネタっぽい言い回しだけどbigIA,SmallIAの時にも同じこと思ったんですが、そうやって矮小化してUIとUXがセットだって信じこんでる人っているんですか!?そこのペルソナが見えてないので、そういう仮想敵と戦ってないですか!?という印象は否めない。

同様に「スタートアップのCTO」もそうで、肝はスタートアップのアクセラレータプログラムなどで「経営者だけじゃダメですよー。フルコミットするエンジニアが一人は必要なので、それぐらいは集めなさい」というのが始まりで、そうするとお金がないタイミングで参画させるわけだから、雇うというよりは経営にコミットしてくださいね、というスタンスにせざるを得ないところからCTO募集に繋がっていくんでしょうが、いずれにせよ「出資要件」として、CTOという肩書が安売りされている感は否めない。

CTO募集とかフルスタックエンジニア募集とか都合の良いこと言っちゃだめ – UNIX的なアレ

なにせCTOと言えば、いきなりエライ人になれそうだから、ってので人材採用のエサに使われてるようなのだが、組織がまだなく、取締役でもないのであれば、何も「O」としての力はないので、まだトライアル的なタイミングで、うまくいかなくなってやめてしまったというケースも語られている。

雇われた側から見たスタートアップのCTOについて – 表道具

…「雇われた」と「CTO」と言う言葉は成り立たないんですよねぇ。もし社長がそういうメンタリティに落とし込んでいたなら、それそのものがズレているという話である。しかし、これどこの会社なんだろうなぁ。その後うまく行ってる否かだけが気になっています。
(そういう風に人を使っていく会社が、必ずしもうまくいかないとも言わないし、うまく行くとも言わない。)

なお、CTOの役割については、ベースとなる部分で「技術経営」という学問分野があるので、そこの説明文を引っ張ってくるのが一番良いんじゃないかと。

技術経営(MOT) とは – コトバンク

「技術経営」(MOT:Management of Technology)とは、技術力をコアコンピタンスとする企業・組織が、その事業の持続的発展のために研究開発や技術開発の成果を事業化に結びつけ、新たな経済的価値を創出していくマネジメントのこと。(略)技術を経営資源として戦略的・効率的に活用するためには、テクノロジーとマネジメントの双方に精通した人材が必要であり、こうした技術経営(以下、MOT)人材の育成が、わが国の産業界においても喫緊の課題として浮上しています。

ま、でも、これも最初はできるエンジニアでいいんじゃね?!とか思ってたりします。だって最初はマネジメントする対象がいないんですから。サービスがうまく行き始めたら、こういうことを考え出せばいいと思いますよ。

GREEの藤本さんの記事もbuzzってましたが、GREEのような多様な技術を扱う会社のCTOとしての話も、攻殻機動隊にあった「シーザーを理解するのにシーザーになる必要はない」というあたりで割と説明できるような気がします。本田宗一郎氏だって自社の全ての技術を扱えたわけではないでしょう。そこが「マネジメント」と「カリスマ技術者」との違いだと思います。

とはいえ肩書をCTOとして参画させるのなら、「スタートアップのCTOは、普通の企業のCTOとは違うんです」ではなくて、できる限り、その人は役員会(もしくは相当する会議)に出席し意思決定に一票を投じる経営者の一員であるべきで、できれば株を持っていると望ましく、取締役になっていればCTOは被雇用者ではないです。別にCTOという肩書に法的拘束力はないですが、用語の使い方ではなく、その人の会社への関わり方のスタンスを適切なものにするためにも、そこだけは守ってほしいですね。

そうではなく役員報酬ではなく給与で支払う非雇用者であるならば「CTO候補」とすべきですし、「技術責任者」とか「技術主任」とかいろいろあると思います。

#って書いてて思ったが、どこかのCTOになりたいなw

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